ブログ

訪問看護における特別訪問看護指示書(特指示)発行時における看護・リハビリ介入のポイントについて

こんにちは。福井市のアトリエ訪問看護ステーションです。

特別訪問看護指示書が発行されると、状態に応じて連日の訪問や、1日複数回の訪問を組み立てられるようになります。普段より生活の場に入る機会が増え、状態の変化や、暮らしの中の困りごとを捉えやすくなる期間です。

この期間に、私たちが忘れずに持っていたい問いがあります。

「特指示が終わった翌日、この方はどうやって暮らしていくのか?」

まずは状態を安定させること。そのうえで、特指示が終わった後にも生活が続くように整えること。この2つを、初日から一緒に考えたいと思います。

「今日できた」を「明日も続けられる」につなげる

毎日訪問して薬を飲めている。連日の訪問でポジショニングを調整し、活動量を維持できている。肺炎に対して、主治医の指示に基づく抗菌薬の点滴治療と全身管理で、状態をコントロールできている。

どれも大切な変化です。ただ、その状態が「専門職が毎日来ているから成立している」のなら、訪問が減った後に何が起きるかを考える必要があります。

服薬を促す人がいなくなる。食事介助の方法が元に戻る。夜間のトイレ移動では、訪問時に整えた環境が使われていない。こうした支援の抜け落ちは、終了当日になってからでは調整が間に合わないことがあります。

特指示の期間は、処置と観察を集中的に行いながら、訪問していない時間を支える方法をつくる期間でもあります。

特指示の発行条件や期間、保険の扱いについては、関連記事の① 特別訪問看護指示書が発行される条件は?で解説しています。この記事では、特指示期間中の看護・リハビリの実践に焦点を当てます。

状態が変わった背景に、生活の課題がないか

急性増悪の治療・観察を優先しながら、並行して「なぜ今回の状態になったのか」を考えます。

誤嚥性肺炎なら、嚥下機能だけでなく、食事の場面や口腔ケアまで確認する。転倒なら、筋力だけでなく、時間帯、動線、履物、トイレを急ぐ事情まで確認する。服薬が続かないなら、飲み忘れと決めつけず、本人が薬をどう感じているかを聞く。

もちろん、すべての原因を2週間で解決できるわけではありません。疾患の進行や回復に時間がかかる課題もあります。それでも、変えられる要因と残るリスクを整理し、誰が引き続き対応するかを決めることはできます。

事例1:50代・独居。毎日3回の服薬をどう続けるか

ここからは、支援の考え方を共有するための想定事例です。特定の利用者さまの経過や実績を紹介するものではありません。

血液疾患があり、1日3回の服薬を指示されている独居の方。薬を飲むことに抵抗感があり、退院直後の状態から主治医が頻回訪問を必要と判断し、特指示が出たとします。普段も医療保険で訪問看護を利用している方です。

期間中、看護師の声かけによって服薬できるようになりました。しかし、そこで支援が完了したとはいえません。

「訪問して看護師が毎日セットする」「声をかければ飲める」と、「訪問がない日にも飲み続けられる」は、状況が異なります。

飲みたくない理由と、飲み続けられない背景を評価する

副作用がつらいのか。薬の目的が十分に伝わっていないのか。回数が生活に合わないのか。飲み込みにくいのか。本人が大切にしていることと、そもそも、飲む習慣がないのか。認知機能の問題なのか。

「飲めていない」という言葉だけでまとめず、本人の言葉と実際の生活を確認します。服薬回数やお薬の見直しは主治医・薬剤師へ相談します。訪問看護側の判断で用法を変更することはしません。あくまで、状態の報告・提案です。

毎日の訪問を続けながら、服薬の自立度を段階的に評価する

この14日間で評価したいのは、毎日処方どおりに内服できているかに加え、看護師がその場でセットしたり声をかけたりしなくても、どこまで本人が服薬を続けられるかです。

たとえば、看護師が毎日1日分をセットしていた方に対し、薬剤の特性と本人の管理能力を主治医・薬剤師と確認したうえで、2日分のセットに変えてみます。訪問は毎日続けます。 翌日の訪問で、予定した時間の薬を選べているか、飲み忘れや重複服用がないか、残薬・空包・本人の説明が一致しているかを確認します。残薬が減ったことだけで、正しく内服できたとは判断しません。

2日分を管理できるようなら、3日分のセットで評価します。これは服薬回数や1回量を変更することではなく、準備する日数を変えて、本人が管理できる範囲を確かめる方法です。まとめて飲んでしまうおそれがある場合や、飲み間違いの影響が大きい薬剤では、セット日数を増やさず、管理方法そのものを見直します。

うまくいかなかった場合も、「自己管理はできない」で終わらせません。日付や朝・昼・夕の区別が難しいのか、薬の袋を開けられないのか、行動を始めるきっかけが必要なのか。どの工程に、どれぐらいの支援があれば内服できるのかを評価します。

服薬管理能力は、認知機能だけでなく、視力、手指の動き、生活習慣、薬に対する理解や意欲などを合わせて捉える視点が必要です。高齢者を対象とした厚生労働省の指針でも、生活状況・残薬・服薬状況を多職種で確認し、服用管理能力を把握することが示されています。参考:厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」6.服薬支援

この事例のように血液疾患がある方では、疾患や治療内容に応じて、貧血に伴う息切れ・疲労、出血や感染の兆候など、主治医と共有すべき観察項目も整理します。服薬できていても、病状の変化を捉えるために頻回の看護が必要な場合があります。

14日間で見極めたいのは、本人が自立した日常生活を送るために、どのような看護介入が、どれぐらい必要なのかということです。 自立は、すべてを一人で行うことだけを意味しません。必要な支援を使いながら、本人ができることを続けられる状態を目指します。

終了後の看護頻度を、評価の結果から考える

服薬の自立度と全身状態を合わせて評価すると、特指示終了後の支援にも、いくつかの選択肢が見えてきます。

  • 週1回の看護:訪問の間も内服を継続でき、全身状態も安定している場合。
  • まず週2回の看護で開始し、その後に週1回を検討:セット日数を延ばす評価では内服できていても、訪問間隔が空いた生活で継続できるかを、もう少し確認したい場合。
  • 週1回の看護と週1回のヘルパー:看護による病状・服薬管理の評価に加え、生活上の声かけや支援を組み合わせることが有効な場合。ヘルパーが担える服薬介助の範囲と、実際に利用できる制度を確認します。
  • 看護を週3回にするなど、医療的な観察を厚くする:病気の進行が速い、治療の影響が大きいなど、介護職の生活支援だけでは補えない観察・判断が必要な場合。

これらは固定の正解ではなく、評価から考える支援案です。2〜3日分の管理ができたことだけで、1週間の自己管理もできるとは判断できません。終了後に予定する訪問間隔で、薬の準備・服用・確認が成り立つかまで検討します。

主治医・薬剤師・関係職種と連携し、本人の希望、疾患の経過、服薬管理能力、利用できるサービスを合わせて、必要な看護頻度を決めていきます。

事例2:80代・誤嚥性肺炎。点滴が終わった後の暮らしを考える

普段は介護保険で訪問看護を利用している方が、誤嚥性肺炎で連日の点滴を必要とし、特指示が出たとします。
点滴の管理、呼吸状態や全身状態の観察、変化を主治医へ伝える判断は、欠かせない専門的なケアです。そのうえで、点滴が終了した後も生活は続きます。

14日間で評価しないといけないのが。なぜ誤嚥性肺炎になったのか。

看護とリハビリの情報を、食事場面でつなぐ

看護は、呼吸状態、食事・水分摂取、疲労、口腔内の状態などを確認します。リハビリ職は、座位保持、体幹や頭頸部の位置、椅子・テーブルとの関係、食具の操作、食事中の疲れ方などを評価します。嚥下機能の専門的な評価が必要な場合は、医師や言語聴覚士、歯科職種などにつなぎます。

誤嚥性肺炎の支援では、治療に加えて口腔ケアや嚥下への支援も大切です。食事の方法は本人の状態に合わせて検討し、食形態やとろみを一律に決めないようにします。参考:日本呼吸器学会「誤嚥性肺炎」

家族が食事介助をしているなら、一口量や介助のペースも一緒に確認します。うまくいかない場面があっても、家族のせいにするのではなく、介護にかかる時間や、疲労度、食事介助に対する理解なども評価する必要があります。

「ゆっくり食べてください」と伝えるだけで終わらず、その家で続けられる方法を一緒につくることが大切です。

訪問看護の回数だけで支援を考えない

食事の時間に適切な介助が入ることが、生活を支える鍵になる場合もあります。

たとえば、状態の安定と必要な看護量を確認したうえで、ケアマネジャーと「看護を週3回から週1回に見直し、食事時間帯の訪問介護を増やせるか」を検討する場面は考えられます。

ただし、これは全員に勧める組み合わせではありません。看護を減らしても安全か、実際に食事介助を担えるか、サービスを確保できるか、本人・家族が納得しているかを確認する必要があります。介護保険の単位数も単純な回数交換にはならないため、ケアプラン全体で検討します。

目指したいのは、看護の訪問回数を維持することではなく、必要な方に、必要な支援が届くことです。

転倒のケースでも、同じ問いを持つ

転倒を繰り返している方なら、けがの処置や痛みの確認に加えて、「どこで、何をしようとして転んだのか」を共有します。

夜間のトイレ移動、立ち上がり時のふらつき、手すりの位置、歩行補助具の使い方。看護とリハビリが情報を合わせると、訪問中の動作練習だけでは見えなかった課題に気づけることがあります。

必要に応じて、リハビリ職の介入、福祉用具、住環境、排泄時の支援などを調整します。「歩けた」という記録を、その人が実際に歩く場面の安全につなげていきます。

初日から終了後まで、何を進めるか

以下は、最長14日間の指示を想定した実務上の目安です。制度上の期限ではなく、状態や実際の指示期間に合わせて前倒し・調整します。

時期の目安 チームで進めたいこと
初日〜3日目 急性期の対応を優先。開始・終了日を共有し、終了後に困りそうなことと本人の希望を確認する
4〜7日目 生活場面を評価。主治医・ケアマネジャー・関係職種と、終了後の支援案と担当を相談する
8日目〜終了前 新しい方法を安全に試し、本人・家族・支援者が実行できるか確認する。未解決の課題を残さず共有する
終了時〜終了後 次回訪問日、支援の担当、連絡先、再評価の時期を確認し、実際に支援が届いているか確かめる

状態が不安定なままなら、日数だけを理由に元の訪問頻度へ戻すのではなく、主治医へ再評価を相談します。特指示の再交付を当然の前提にせず、利用できる制度と必要な療養体制を確認します。

真皮を越える褥瘡や気管カニューレの使用など、月2回の対象となる方も同様です。継続的な支援が見込めても、家族の負担、訪問のない時間、次の期間の計画を確認する必要があります。

アトリエのスタッフ同士で、確認したい5つの問い

  • 今回、頻回な訪問が必要になった理由を説明できるか。
  • 今の安定は、どの支援によって成り立っているか。
  • 特指示が終わると、どの支援が減る・なくなるのか。
  • 残る課題を、誰が・いつ・どの方法で支えるのか。
  • 本人と家族は、その方法を理解し、実際に続けられそうか。

記録にも「服薬できた」「点滴終了」「歩行練習実施」だけでなく、その先を残したいと思います。

たとえば、「声かけで服薬できた。終了後の昼の服薬確認者が未定。担当看護師が薬剤師と○日までに調整する」。ここまで書けば、次に動く人と課題が見えます。

現場でよくある疑問

特指示だけがあれば訪問できる?

通常の訪問看護指示書と訪問看護計画書も確認が必要です。特指示は、一時的に頻回な訪問が必要な理由や期間を示すものとして、有効な通常指示と合わせて扱います。出典:訪問看護療養費の留意事項

予定より訪問日数が少なくなったら?

訪問実績が週3日以下になったという理由だけで、自動的に介護保険へ変更する考え方ではありません。中止・変更の理由と状態を記録し、主治医と必要性や計画を共有します。予定と実績に差がある場合も、記録を残せば必ず算定できるという意味ではなく、指示期間や給付調整を含めて確認します。

リハビリ職も介入できる?

訪問看護ステーションのPT・OT・STによる訪問も、主治医の指示と訪問看護計画に基づいて検討します。「特指示があるから毎日リハビリ」という決め方ではなく、病状、負荷、必要な支援、看護との役割を確認します。別サービスである訪問リハビリテーションとは区別が必要です。出典:訪問看護療養費の留意事項

月をまたいだら、期間はリセットされる?

月末で指示期間が自動終了したり、月初に14日間が自動追加されたりするものではありません。指示書の期間を確認します。翌月の再交付も、その時点での診療と必要性の判断が前提です。

14日間のケアを、その先の人生につなげる

特指示期間中の目標は、まず状態を安定させること。そして、支援の頻度や形が変わった後にも、その人らしい生活を続けられるようにすることです。

「今日の処置が終わった」から、もう一歩先へ。

私たちが訪問していない時間にも、暮らしは続いています。看護とリハビリの視点を持ち寄り、本人・家族・地域の支援者と一緒に、その時間を支える方法を考えていきたいと思います。

人生に、医療を。

アトリエ訪問看護ステーションが大切にする姿勢を、特指示の14日間にもつなげていきます。

福井市周辺で訪問看護・リハビリや退院後の支援についてお困りの方は、アトリエ訪問看護ステーションへご相談ください。

※事例は支援を検討するための想定例です。具体的な医療行為・支援量は、本人の状態と希望、主治医の指示、利用できる制度に合わせて決定します。

-ブログ

PAGE TOP