「どうして、アトリエなんですか?」
訪問看護ステーションとしては、少し変わった名前なので、そう聞かれることがあります。
理由は二つあります。
医療っぽすぎない名前にしたかった

一つ目は、医療っぽすぎる名前にしたくなかったからです。訪問看護を利用する方は、年配の方だけではありません。
24時間365日、0歳の赤ちゃんから100歳を超える方まで。病気や障害の程度、年齢にかかわらず、必要とするすべての方に利用していただく可能性があります。
だから、事業所の名前によって「ここは高齢者のための場所」「ここは重い病気の人が利用する場所」と、誰かを区別したくありませんでした。
利用する方やご家族にとって親しみやすく
医療従事者にとっても呼びやすい名前。
そして、これは完全に私の好みですが——
シンプルに、かっこいい名前がよかった。
それが一つ目の理由です。
『アトリエ』の語源はフランス

もう一つの理由は、僕たちが目指す在宅医療の姿と、『アトリエ』という言葉が重なったからです。アトリエは、フランス語で「仕事場」や「工房」を意味する言葉。
フランスでは、家の一角に、仕事や趣味に没頭するための空間を設けることがあります。そこでは、決められたものを同じようにつくるのではなく、一人ひとりが手を動かし、その人にしかつくれないものを生み出していきます。在宅医療も、少し似ていると思うのです。
在宅医療は、病院の医療をただ在宅で行うものではない
在宅医療は、病院で行っている医療を、そのまま自宅へ持っていくことではありません。
エビデンスに基づいた医療を展開する上で、利用者様やご家族が何を望み、どんな時間を過ごしたいのかを一緒に考えていく。そこに、決まった一つの正解はありません。
「最期に、ラーメンが食べたい」
その言葉を聞いたとき、
できない理由を探すのではなく、
どうすればかなえられるかを考える。
普段は、一歩も歩こうとしなかった人が、
「今日、孫が来るよ」と聞いた途端、
自分の力でベッドを降りようとする。
人を動かすものは、
筋力や血圧や検査の数字だけではありません。
会いたい人がいること。
もう一度、食べたい味があること。
帰りたい場所があること。
大切にしたい時間があること。
人は、医学的な正しさだけで
生きているわけではないのだと思います。
その人にとって、
幸せとは何か。
病気や障がいとともに、
どんな人生を歩みたいのか。
何を守り、
何を選び、
どのように生きていきたいのか。
私たちは、答えを決めるのではなく、
選べる道を、そっと増やしていく。
そして最後は、
ご本人とご家族が選んだ道を、
ともに歩いていく。
病態ではなく、暮らしをみる。
これが、私たちの考える在宅医療です。
私たちは、ただ単に「おうちで看護を提供してのではありません。その人の人生に、上がらせていただいているのです。
家には、その人が積み重ねてきた暮らしがあります。好きなもの、家族との関係、譲れないこと、言葉にならない思いがあります。
僕たちは、そこにお邪魔する。
そして、その人らしい暮らしや生き方を尊重しながら、その人に合った医療を一緒につくっていく。
一人として同じ人生がないように、そこでつくられる医療も、一つとして同じものにはなりません。
決まった正解のない一人ひとりの人生に、
医療の専門性と、
人としての想像力をもって本気で向き合う。
そんな場所でありたいという願いを込めて
『アトリエ』と名づけました。
アトリエ訪問看護ステーション